06<< 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. 12. 13. 14. 15. 16. 17. 18. 19. 20. 21. 22. 23. 24. 25. 26. 27. 28. 29. 30. 31.>>08
神はさいころを振らない
--/--/-- ( -- ) --:--:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告
 | comment:--
2008/09/05 ( Fri ) 15:53:52
またノーダイスの一人称になります。
できるだけメイプルストーリー公式の設定を使いたいのですが、これを書いている現在、リニューアルがまだ終わっていないので、ここから先は適当になります。

---------------------



 これは夢だ、と反射的に思った。

「何者かが時限装置を仕掛けたので、この島はもうすぐ海に落ちてしまう……」

 僕は、海の見える露台に立っていて、見たこともないおじさんと一緒だった。
 嵐が来る前触れのように波は機嫌が悪くて、ああ、昨日の夜は結構、雨が降っていたなぁ、と僕は思った。

 あれ? 昨日?
 これが夢なら僕は自分のベッドに寝ているはずで、ということはまだ朝じゃないから、昨日じゃなくて今日なのかな?
 まあ、いいや。
 多分だけど、日付はもう跨いだと思うし。

「皆の避難が完了したら装置を破壊する……」

 おじさんは、さっきから同じセリフばかりを繰り返している。
 すっぽりとかぶった茶色のローブを縁取る刺繍は金色で、母さんが集めていた古い本の表紙を思い出させた。
 あの紋様は、何のおまじないだったっけ。
 魔除けだったっけ?

「早くこの島から脱出してビクトリアアイランドへと急ぐのだ……」
「っていうかさ」

 僕はちょっと苛々して、おじさんの長話を遮った。

「その危険な装置っていうのをおじさんが壊してくれるんなら、別に逃げなくてもみんな助かるんじゃないの?」

 だって、そうじゃないか。
 そうだろう?

 大剣を背負ったいかめしい髭のおじさんは、僕の口答えにも表情を動かさず、淡々と言った。

「首尾良く時限装置を解体できたとしても、大規模な地殻変動が起こるのは間違いない……」

 だいきぼなちかくへんどう?
 それ何?
 時限装置っていうのは、誰かが仕掛けたもので、つまり人かモンスターかが悪さをしたってことじゃないの?

「何者かが時限装置を仕掛けたので、この島はもうすぐ海に落ちてしまう……」

 そのセリフはさっきも聞いたよ。
 僕の質問には答えてくれないの?
 なんて不親切なんだ。僕の夢のくせに!

「皆の避難が完了したら装置を破壊する……」

 おじさんは壊れたレコードのように繰り返し、僕は退屈して視線を彷徨わせた。

 この島っていうのは、もちろんメイプルアイランドのことなんだろう。
 メイプルアイランドは、この世界―――下の人たちは「メイプルワールド」と言うらしい―――の空のどこかに浮かんでいる神秘の島だ。

 下っていうのは、空に浮いているこの島から見て、下。
 ビクトリアアイランドのこと。
 お年寄りの中には「本島」とか言う人もいるけれど、とにかく、本物の海に浮いている大陸だ。
 巨大な島のことを大陸と言うらしい。

「早くこの島から脱出してビクトリアアイランドへと急ぐのだ……」

 ビクトリアには、島の中心部に大きな魔法の木<世界樹>がある。
 この世界樹が、世界中のモンスターたちに生命力を供給しているので、世界樹がある限り、人はモンスターに悩まされなければならない。
 でも、世界樹を切り倒すわけにもいかない。
 ビクトリアアイランドは世界樹なしには存在しないのだから。

 ビクトリアへ行くということは、戦う覚悟を決めるということだ。
 人が平和に暮らすには、モンスターは脅威に過ぎる。

「僕はまだ子供だし……戦えないよ」

 いつの間にか、雨が降り始めていた。
 でも、僕のパジャマもおじさんのローブも全然濡れなかった。さすが夢だ。

「ならば、武器を与えよう。薬も持って行け。供もつけてやろう」

「無理だよ」

 僕はかぶりを振った。
 本当のところ、冒険の旅に出るというのは胸躍る提案だったのだけれど、まだ住み慣れた村を離れる覚悟はできていなかった。

「僕はノーダイスだもん」

 それが僕の名前。
 サイコロを振られることがなかった、不幸で幸運な、僕の名前。



スポンサーサイト
第一章
 | comment:--
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。